理事長挨拶
この度日本免疫不全・自己炎症学会(JSIAD)の第3代理事長を拝命した東京科学大学の金兼弘和です。本学会は2017年に設立されてまだ10年に満たない学会ですが、会員数も500名を超える学会に成長してきました。これもひとえに平家俊男前々理事長、森尾友宏前理事長の卓越なる求心力と指導力の賜物と思います。
本学会が対象とする疾患は原発性免疫不全症ならびに自己炎症性疾患ですが、易感染性や自己炎症のみならず、自己免疫疾患、悪性腫瘍、アレルギーなど多岐にわたる疾患を包括することから、昨今は先天性免疫異常症(IEI)と称されることも多くなっています。IEIのほとんどで原因遺伝子が同定されており、遺伝子ベースでIEIを考えていく時代となっています。国際免疫学会連合(IUIS)の2024年版分類では555の疾患が報告されています。わが国では主なIEIを対象にパネル検査として遺伝子検査が保険収載されており、多くの施設で診断可能となってきています。しかしIEIの臨床ならびに研究の進歩は著しく、専門家でもその進歩に追いつくのは大変な時代となってきています。本学会は今後もIEIの知識の普及ならびにすべての患者が適切な治療を享受できるように努めて参ります。
本学会はこれまで多くの活動を行い、今後も継続予定ですが、今後さらに推進したい活動が3つあります。一つめは疫学調査です。わが国にはPIDJ2という疾患レジストリーがあり、難病プラットフォームとの連携も行われていますが、まだまだ不十分と思います。海外のデータベースのように速やかに正確な疾患数や予後を出せるような体制になっていません。これらのデータベースを充実させることによって、新たな疾患の発見や治療法の開発につながると思います。二つめは研究・教育活動の推進です。研究面においてはこれまでもわが国から新奇IEIの報告がなされていますが、まだまだ同定されていないIEIがあると思います。また全国調査あるいは国際共同研究の推進によってよりエビデンスレベルの高い臨床研究も望まれます。教育活動では教育コンテンツだけでなく、ウェビナーやスクール等の活動で若手にIEIに興味をもってもらい、本学会の将来を見据えて次世代の担い手を育てる必要があります。特に小児科だけでなく、内科やその他の診療科の若手に対する教育が必要と感じています。三つめは移行期医療体制を充実させることです。IEI患者は主に小児科が中心になって診療していますが、実際の患者の半数は成人であり、また成人になって初めて診断される患者さんも少なくありません。IEIに対する診療技術の進歩で成人にキャリーオーバーする患者さんも少なくありません。それらの患者さんが治療難民となることのない医療体制を構築することが本学会の使命と考えます。
IEIは決して稀な疾患ではありません。まだまだ見逃されている患者さんがたくさんいます。IEIの研究はマウスでは知りえない、真のヒト免疫学の神髄に深く切り込めるテーマです。IEIに興味のある臨床医のみならず、基礎研究者も是非本学会に入会してお互いに学んでいきましょう。
日本免疫不全・自己炎症学会
理事長 金兼 弘和
役員一覧
代表理事(理事長) | 金兼弘和(東京科学大学) |
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理事(副理事長) | 和田泰三(金沢大学) 岡田賢(広島大学) |
理事(総務担当理事) | 大西秀典(岐阜大学) |
理事 | 石村匡崇(九州大学) 井田弘明(久留米大学) 井上徳光(和歌山県立医科大学) 今井耕輔(防衛医科大学校) 植木将弘(北海道大学) 江口真理子(愛媛大学) 金澤伸雄(兵庫医科大学) 河合利尚(国立成育医療研究センター) 神戸直智(京都大学) 齋藤潤(京都大学iPS細胞研究所) 笹原洋二(東北大学) 高田紗奈美(東京科学大学) 高田英俊(筑波大学) 西小森隆太(久留米大学) 藤尾圭志(東京大学) 増本純也(愛媛大学) 溝口洋子(広島大学) 宮前多佳子(東京女子医科大学) 村松秀城(名古屋大学) 保田晋助(東京医科歯科大学) 八角高裕(京都大学) |
監事 | 小野寺雅史(国立成育医療研究センター) 堀内孝彦(福岡市立病院機構 福岡市民病院) 森尾友宏(東京科学大学) |